踊り場で仁王立

今から数年前、北海道にしては歴史的な猛暑を記録した、
ある年の、ある男の精神病院入院記。

専門学校二年生の春、自分が応募した某企業の人事の方が就職試験の為に
こちらの学校へ出向いてこられ、就職試験本番を旧校舎5Fで受ける事になった。

試験当日、スーツに着替えて、試験会場の旧校舎5Fへ向かう。
旧校舎のエレベーターは生徒使用禁止なので、
多少面倒だと思いつつも階段で5Fまで駆け上がる・・・!ドドドドドド・・・あれ?

2Fまで登って、3Fへの階段の一段目に踏み出そうとした時に、何か身体に違和感を感じた。

足が動かない。


一段目に足を踏み出そうと、脳から身体に指令を送っているはずなのに、
自分の足は一向に動く気配が無い。まるで石になったかのように微動だにしないのだ。

もしかして
昨晩の徹夜
日頃よく走る今1F→2Fまでの階段を駆け上がった
のコンボで足の疲労がMAXに達して動かなくなったのかとも考えたが、
普段この程度の疲労では軽い筋肉痛が起こる程度で、
まして動かなくなるなんてことは有り得ない

とりあえず足以外はまともに動かせたので、階段の踊り場で仁王立ちしながら原因を考えた。
幸い、旧校舎は人通りがほとんど無く、不審がられることも無い。

ケース1 : 旧校舎の建物はかなり古く、専門学校になる前は予備校として使用されていた。
        その予備校時代、屋上から飛び降りた生徒が数名居る。
        ・・・という話をネット上で見かけた。信憑性は限りなく薄い
        つまり悪霊の仕業。地面から手が出てきて俺の足首を掴んでいた。とか。
        もちろん足元を見てもそんな手は無かった。

ケース2 : 足が原因不明の病にかかった。または以前からかかっていて今病状が急に出た。

ケース3 : 就職試験会場へ進むことを自分が無意識的に避けており、身体が拒否ってる。

他にも色々考えたと思ったが、他は忘れた。
後から冷静に考えたところ、正解はケース3だったと思う。

体育座りを崩したような状態で、足に痛覚があるか試しに叩いてみると普通に感覚があったので
少し安心する。
数分すると何事も無かったかのように足を動かせるようになった。

その後は順調に就職試験を受けた・・・

帰宅後、就職試験の結果よりも、あの足の不調が気になっていた。
翌日、足の病気のことをネットや市立図書館などで調べる。

肉体的な病気はどうもしっくり自分のあの状態に当てはまる物が無かったのだが、
どうやら精神的な疾患からくる身体の不調・障害もあるらしいということは分かった。

数日後、内定の通知が学校から贈られてくる。
後は卒業するだけ・・・のはずだったんだが、就職試験後からどうも調子が悪い
夜はほとんど眠れない、気が重い、すぐ疲れ、登校もままならない

就職試験で燃え尽きたんだろうか?

日を追うごとに落ちていき、どうにもならんので、同じような状態の人がどっかに居ないかと
ネット上を検索してWEBをフラフラしていると、2chに辿り着く。

開いたのは内藤ホライゾン(ブーン)関連のスレッドだった。
色んな人がブーン関連のAAを貼ったり、意味不明な発言をブーンにさせているような
特に明確な目的も無さそうなブーンのスレッド

思い切りスレチなのは分かっていたが、自分自身くたびれていたので、
どこで今の自分の状態を相談したりできるかをブーンに聞いてみた。
もちろん
( ^ω^)スレチ
( ^ω^)ググレカス
と言われるのを覚悟しながら。

(書き込み内容はうろ覚え)
名無しさん(俺)
「なんか就活終わってから、肉体的にも精神的にも落ちちゃって登校もままならないんだけど
 足とか一回動かなくなったし・・・どこで相談すれば良い?おせーてブーン・・・」

名無しさん
「( ^ω^)つ 精神的なのを疑ってるなら、ここ読んでみるといいお
 ttp://yeisu.hp.infoseek.co.jp/matome/seishinbyou/seishinbyou.html 」

名無しさん(俺) 
「ありがとうブーン」

一人の名無しブーンが貼ってくれたURLのリンク先は、
どうやっても何かを相談できるようなサイトではなかったが、
今の状態とおそらく関連のあるノベル作品がいくつか掲載されていた。

メンタルへルス板のブーンはやさしかった。

小説の内容は、苦学生の主人公・内藤ホライゾン(ブーン)が精神病の一種である「統合失調症」を
発症してしまい、その後治療を通して様々な人と出会い・・・そして
途中で作品の更新が止まっていた。現在も未完の状態で再開の目処は立っていないようだ。
(2008年2月23日追記 更新再開されたようです。)

作品を読み終えたと同時に、精神病に対する興味が今までの数倍に膨れあがった

それからというものの、ネット上のメンタル関連のサイトや
解説サイトなどを四六時中読み漁るようになった。

次第に、抗鬱剤抗不安剤のよくある謳い文句の、「気が楽になります
落ち込んだ気分を改善し、前向きになれます」に惹かれてしまい、
向精神薬がそんなに素晴らしいものなら試してみたい。なんていう、
状態を改善したいというよりも、薬がどのように自分の精神に気持ちよく作用するのかという
不順な動機で、精神科または心療内科にかかってみたいという願望を持つようになっていった。

その間、学校はサボり、朝は起きない、食事もあまり取らず体重は落ち、
顔色は悪くなっていたので、心配した親が、何か悩みがあるなら相談しなさいと聞いてきた。

俺は上記の不健康そうな外見で調子が良くない。精神的なものから来ているから
心療内科か精神科で治療を受けたい。
」と伝えた。
自分の家では、これまで精神を患った人は居なかった上に、親の精神科に対するイメージこそ
このコンテンツのトップページの見出し並のものだったので、それは妙な顔をされたが、
俺の不健康極まりない状態を見て、しぶしぶ了承してくださった。

そして生まれて初めてかかった精神系の病院が
住居と同じ市内にある
S病院である。

S病院での治療は外来・入院を合わせても短いものであったが、
この後のM病院へ保護入院するきっかけとなった重要な要因が発生した場所なので
次回はS病院での一週間の入院記録を書いていこうと思う。


☆戻る☆



inserted by FC2 system